虐待マニュアル|介護施設編?

 








虐待マニュアル

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実態を赤裸々に綴っています。まるで虐待はこのようにやるんだと言わんばかりの迫力。虐待マニュアルと言って通用しそうな内容。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89751

利用者が入浴中に失禁させられる…「いじめ」が蔓延する介護施設の“ありえない危険度”

坂倉昇平

近年「大人のいじめ」が深刻な問題になっています。

厚生労働省の統計によると、「いじめ・嫌がらせ」に関する労働相談が、ここ10年で2倍に激増。労働問題に取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」を立ち上げ、膨大な数の「いじめ・嫌がらせ」に関する相談を受けてきた坂倉昇平氏がその実態を、近著『大人のいじめ』(講談社現代新書)をもとに解説します。

【前編】「「男を誘ってるんでしょ」、30代の女性介護士が青ざめた「過酷な職場いじめ」の実態」では、介護士のIさんが職場でいじめを受けていたこと、そこでは危険な「介護事故」が絶えないことを見た。利用者がベッドから落ちるなどの事故が頻発していたのだが、じつはさらに危険な介護事故が起きていたのである。

利用者の骨にひび

特に一人で5~6人を見る「お泊まりデイサービス」は危険だった。歩行が困難な80代の女性が、トイレに行こうとナースコールを押すも、職員が来なかったため、歩行器を使って自力で行こうとして転倒し、大腿骨にひびが入る事故があった。ワンオペ中の同僚が、他の利用者の介助でトイレにおり、気付かなかったのだ。

その後も、同じ利用者が同じ状況で再度転倒し、今度は大腿骨を骨折した。しかし、怪我をしても、夜勤中はワンオペで付き添いができないため、救急車を呼ばないしきたりになっていた。

以前に一度事故を起こした同僚が、24時間勤務後に急にシフトが追加されてワンオペ夜勤となった結果、途中で寝てしまい、ナースコールに気付かず、やはりトイレに行こうとした高齢者が転倒したケースもあった。同僚は疲労困憊していたが、先輩からは「2回もやりやがって」と怒りをぶつけられていた。

利用者が入浴中に失禁

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脳梗塞や心筋梗塞を患い、脈拍や呼吸が安定していない利用者を入浴させていたとき、利用者の血圧が低下して意識を失い、その間に尿失禁・便失禁させてしまったこともあった。

通常の介護じたいも手が回らないため、利用者には一日中ずっとテレビを見させているだけ。「トイレはちょっと待って!」と利用者に怒鳴ってしまうこともあった。徘徊がひどい人が多く、認知症の人が勝手に外に出てしまったこともある。

人手不足による長時間労働、多すぎる業務、過酷なシフト、介護事故の危険。先輩のいじめの背景には、こうした事情があったのだ。Iさんは、社長に先輩の発言や職場の実態を話したが、当然のように何の対応もされなかった。

Iさんは退職し、なんとか会社に責任を取らせたいと介護・保育ユニオンに相談した。当時、憔悴していたIさんは、「誰も信じられなくなった」と繰り返しつぶやいていた。

その後、ユニオンに加入したIさんは会社と団体交渉を行い、社長に一連のことを謝罪させ、最終的に解決金が支払われた。ただし、そのときには、先輩もすでに退職していた。

先輩からの叱責・怒声・詰問

40代のJさんは、老人ホームで介護士として働いていた。フルタイム・無期雇用だが、時給制だ。運営する会社は、全国に数十施設を展開しており、いまもさらに次々と新しい施設をオープンさせて急成長している。

Jさんは、施設のフロアリーダーを務める先輩介護士からいじめに遭っていた。この介護士は、Jさんを他の職員や入居者の前で大声で叱責し、顔を合わせるたびに怒声を浴びせてきた。密室で1時間ほど、辞めるように詰め寄られたこともある。

「方針に従わないからクビ」

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なぜ、Jさんはここまで集中攻撃に遭ったのか。フロアリーダーである先輩が繰り返し言ったのは、「方針に従わないからクビにする」という言葉だった。先輩は管理職ではなく、同僚を解雇する権限などないのだが、その方針とは一体どのような内容だったのか。

この老人ホームは、寝たきりの要介護5の高齢者が多く利用していた。しかし、「リハビリです」と言い聞かせて、足元がおぼつかない入居者を無理やり立たせて歩かせるよう、職員たちは指示されていた。Jさんはこの方針に従わなかったのだ。トイレまでの歩行を促すためとして、オムツの使用も禁止されていた。

高齢者を自立させるためというと聞こえはいいが、施設の狙いは経費の節約だった。車いすを揃えたり、オムツを買ったりしないことで、費用を削減していたのだ。

「節約」ぶりは夏の冷房の使用制限にも及び、室温が「厳重警戒」とされる28度に達したある日、Jさんは施設内で熱中症になり倒れてしまった。当然、入居者たちも暑いと苦情を漏らしていた。

実は、この老人ホームは、地域では介護が杜撰なことで有名で、数年前には、点滴で栄養を摂っていた入居者に固形物を食べさせ、死亡させる事件まで起こしていた。Jさんは施設周辺の住宅に、訪問介護の営業のためチラシを配りに行かされたことがあるが、評判の悪さに驚いたという。

こうした「節約」は労働条件にも及んでおり、一日9時間の拘束時間のうち、入居者と一緒に昼食を摂る時間が休憩時間と見なされていた。当然のように、残業代は支払われなかった。

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ストレスから体調を崩す

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劣悪な介護環境と労働条件、フロアリーダーのいじめに耐えかね、Jさんは意を決して、支配人に相談することにした。しかし、支配人は「リーダーの言うことを聞くように」とJさんに指示し、理不尽にも「リーダーに謝りなさい」とまで言われてしまった。もちろん、施設の改善など望むべくもなかった。

Jさんは追い詰められ、精神的な負担から胃腸炎を発症。介護福祉士の資格を取るのに必要な実務経験を積むため頑張っていたが、限界に達して退職を選ばざるを得なかった。

入居者を虐待するか、いじめられるかの2択

Kさんが勤務する老人ホームでは、複数の職員による誹謗中傷や「指導」と称したいじめが繰り返されていた。

その背景として、介護士のうちほぼ半数にあたる10名が、日常的に入居者を虐待していたことが挙げられる。徘徊する入居者には部屋の外から鍵をかけ、認知症や難聴の入居者に対しては耳元で怒声を浴びせる。オムツをきつくあてる影響で、嘔吐する入居者も続発していた。ベッドの上で腕をつかみ、力ずくで体の向きを変えられ、骨折した寝たきりの入居者も複数いた。

こうした介護に同調できない職員は、施設内で嫌がらせを受けるだけでなく、逆に虐待をしているという「クレーム」を法人に「告発」され、解雇に追い込まれそうになったこともあった。

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入居者がストレスのはけ口に

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利用者が入浴中に失禁させられる…「いじめ」が蔓延する介護施設の“ありえない危険度”

坂倉 昇平 プロフィール

多忙の中、一部の職員たちの倫理観が失われたことで、入居者は杜撰に「管理」され、ストレスの「はけ口」となっていた。そして、こうした虐待の横行を法人は放置し、特段の対応はなされなかった。

Kさんは虐待の事実を自治体に通報。入居者全員から聞き取りが行われ、改善命令が出された。匿名の内部告発のため、Kさんが通報者だとは知られていない。しかし、命令後も、部屋の鍵を外からかける対応は続いているという。


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