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お父さんは幸男だったと思う
大好きな人だった
自然と子供の頃が思い出される
弟のように可愛がってくれた
西瓜屋の実家は下駄屋
子供の足で歩いても15分も掛からなかったのではないか
遊びに行くと
下駄を削るナイフで指の間を続けざまに素早く突き刺すのを見せてくれた
超危ないことを平然とやって見せてくれた
まじめで勉強が出来てと評判
でも次男だから家を継ぐことはできない
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父が死ぬと父方の親戚に足を運ぶ頻度が下がった
あまり遊びに行くなと言われた
今思えば酷いことをいう大人たちだ
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幸男が高校に通っているときに
家にカバンを置いて遊びに行っていた
友治が死んだ後も心を通わせてくれた
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専修大学に入って
商業自立は西瓜屋の家系
多分、会計事務所か税理事務所に入ったが、早々に自立したのではないか
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卒業の時に
スキーに連れて行ってくれた
東武線で行ったから
日光の近く?
ファミリーゲレンデ
その時に、
生まれたばかりの小さな赤ちゃんがいた
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泊まりに行くと並んで寝るのだが
寝ながらいろいろな話をしてくれた
クライアントを40に増やせたら食って行けるとか
資格で仕事をすることの価値
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西瓜屋には別の人生があったかも知れない
幸ちゃんに結婚を報告したら相手が違うといって驚いていた
許嫁(いいなずけ)のキヨミちゃんで無かったから
父親の他界を縁に西瓜屋が遠ざかっていった
清美の家も引き払って姿を消した
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幸恵?名前を見てすぐに誰と分かった
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母親の死亡を伝えようとした時、すでに幸男さんはこの世にいなかった
電話に出た人はきっとこの人
あの時の赤ちゃん
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今、ネットを探すと簡単に名前が出てくる
父親のクライアントを引き継いで頑張っているんだろう
何となく嬉しくなる
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全て幸恵の知らない話に違いない
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