田中由紀の人生は駆け抜けるようだった
見えない何か
彼女に才能を与え
時間を奪った
*
子供の頃
ははおやの実家に一緒に連れられているのを見る
妹の久美を従え
従弟たちを従えていた
その景色を見る回数は規制の時に限られるので多くは無い
*
芸は身を助ける?
ピアノが宛がわれピアノにのめり込む
激しい気性は鍵盤が受け止める
情熱をぶつける
*
音楽学校に進んだ彼女を初めて病魔が襲う
その前にいろいろなものが彼女を襲う
彼女の病院へ行き、
彼女の家に行き
心配を伝えることは出来て
心の中の葛藤を共有することは出来なかった
彼女の最初の人生は終わった
東京に自分の場所を求めることを諦めた
*
田舎に戻って普通の生活
普通の修飾
普通の結婚
*
本当にそうだったのかな?
*
由紀の身体はいつも正直
病魔はずっとチャンスを待っていた
*
令和の時代にマスオさん?
サザエさん家にはカツオが居たけど
娘二人の家にマスオさんって
由紀はずっと苦しんでいたかも
*
病魔は測ったように入り込んで来た
*
下品な奴
誰だって病気になる
*
第2の人生はやけっぱちだったのか
嘘の人生だったか
苦しみの中に捨てた人生
*
危篤の母を残して東欧旅行する娘?
バカ娘は母の言葉通りに出かける
*
由紀は先の長くない父親にごめんなさいと謝罪した
先立つ不孝の謝罪ではない
家を消滅させる選択をしたことの謝罪
*
由紀は第2の人生を終えた
*
由紀の心配はそのまま残っている
病魔は誠をも襲っていた
*
数年前に、由紀が我が家を訪問した
初めてのことだ
由紀は薄々何かを感じていたのだろう
マサエの心に応えるチャンスがなかったから
漸くの訪問だった
僅かな時間
こころが自然に流れたて交わっていたような
穏やかな視線に戻っていたのが印象的
あの日が由紀と会って話をした最後だった
*
一生懸命になると先が見えなくなる
それでも一生懸命に生きる
由紀はそう生きた
*